~実験でわかった“室外機が止まっている”という事実~
鎌田先生の講演を聞いてきました

先月、弊社が所属している新住協中部東海支部で行われた鎌田紀彦先生の講演を聞いてきました。
テーマは「ローコストエアコン全室暖冷房手法」。
これからの家づくりに欠かせない空調計画について、非常に興味深い内容でした。
その中で特に印象に残ったのが、先生の次の言葉です。
「大きすぎるエアコンは湿度が下がらない。室内機は動いているけど、室外機が止まっている」
皆さんも「エアコンを入れてるのに何かジメジメするな」と感じた経験はありませんか?
まさにその理由が、この言葉に詰まっていると感じました。
実際に実験してみました(8/30・31の見学会会場にて)
ちょうどそのタイミングで、8月30日・31日に開催した断熱等級7、Ua値:0.22W/㎡kの住宅見学会がありました。
こちらのお宅は床下暖房エアコン1台・冷房エアコン1台(今回は2台)で全館空調しています。
実験の概要とデータ
設定状況と観察結果は以下の通りです。
- 冷房1台:3日間連続運転
- 4日目朝:設定温度27℃ → 室温26.2℃(少し寒く感じたため設定を28℃に変更)
- 測定時間:8:30と15:30の2回
- 測定場所:全館冷房中の玄関にて
時刻 | 温度 | 相対湿度 | 絶対湿度 |
8:30 | 26.2℃ | 50% | 12.3g/㎥ |
15:30 | 27.8℃ | 61% | 16.4g/㎥ |
一見、温度も湿度もそれほど問題ないように思えますが、実は大きな落とし穴がありました。
湿度が下がっていない=除湿されていない?
この間、エアコンの室内機は動いていました。
でも、除湿がされていなかったのです。その証拠に、室外機のドレン配管の下に置いたバケツの水位がまったく増えていませんでした。

写真は13:00ごろのものです、前後の写真取り忘れたんですが8:30に見たときと13:00、15:00に見たときの水位が同じ。
つまり、
- 室内機は送風運転(ファン)だけをしていて
- 室外機は冷媒を動かしておらず=除湿機能が働いていなかった
ということがわかります。
鎌田先生の理論に当てはまった
まさにこれは、鎌田先生が講演で語っていた、「大きすぎるエアコンは除湿されず、室内機は動いているが室外機が止まっている」という現象そのものと感じました。
今回のケースでは、厳密に言えば「大きすぎるエアコン」というよりは、
能力に余裕がありすぎる運転状況(設定温度が室温より高くなってしまった)が原因と思われます。
冷房負荷が小さい状態で設定温度を上げたため、
エアコンは「もう冷やさなくていいね」と判断し、除湿を止めてしまったわけです。
なぜこの話が大切なのか?
家を高性能化すると、冷暖房負荷が非常に小さくなります=エアコンも小さいものでOK
特に断熱等級6~7クラスの住宅では、大きなエアコンを使っても出番が少ないのです。
そうなると、「湿度コントロールが効かない家」になる可能性が出てきます。
高断熱・高気密であるがゆえに、冷暖房の「能力の使い方」に注意が必要なのです。
まとめ:小さなエアコンを正しく使う時代へ
今後、全館空調を1台のエアコンで実現する家づくりが進んでいくと思いますが、
その際には「エアコンの選定と設定の仕方」が非常に重要になります。
今回の実験から得られた教訓は、
- 高性能住宅では“過剰能力”のエアコンは逆効果になることがある
- 室温だけでなく、湿度の変化にも注目すること
- 除湿されているかどうかを確認するには、ドレン水の量が有効な観察方法
ということです。
私たちが目指しているのは、エアコン1台で空調できる快適な家。
そのためには、ただ「高性能にする」だけでなく、家と空調の“相性”をきちんと見極めることが大切だと、改めて感じた次第です。
このことは、松尾設計室の松尾さん、住宅空調設計講座の森さんも同じことを言われています、その家の冷房負荷を計算してその負荷に見合う性能のエアコンを選択することが空調効果や省エネの最適化に繋がります、過大なエアコンは高価ですしもったいないですね。

ちなみにこんな感じで除湿量計測し、一日24時間の除湿量は17.7㍑驚きの量です、このレポートは今度まとめておきます。
ご興味ある方は、ぜひ次回の見学会で実際にご体感ください。
床下から、屋根裏から、家中が快適になるエアコンの使い方を、実物でご覧いただけます。